イギリス在住の大学生ひなさんのコラム第17弾!
今回はロンドン東部、オリンピック・パークに2025年5月に新しくオープンした ヴィクトリア&アルバート美術館イースト(V&A East) の Storehouse をご紹介します。
V&Aといえば、以前ブログでも紹介したサウス・ケンジントンの本館が有名ですが、新しく誕生したStorehouseは少しユニークな存在です。
これまで一般公開されていなかった収蔵庫を開放し、まるで博物館の舞台裏を覗いているような体験ができます。
“働く美術館”という新しい形
館内には約25万点のオブジェクトや35万冊以上の書籍、膨大なアーカイブ資料が保管されています。
ただ展示してあるだけでなく、保存や修復の様子を見学できる「Conservation Overlook」や、自分で作品をリクエストして間近に鑑賞できる「Order an Object」という仕組みもあり、まさに“働く博物館”といった印象でした。
さらに、2026年には隣接してV&A East Museumもオープン予定で、今後の展開にも期待が高まります。
アクセスと雰囲気
アクセスはHackney Wick駅から徒歩約8分。
私はStratford駅から歩きましたが、川沿いやオリンピック・パークの緑を抜ける道のりも気持ちよかったです。
本館同様、入館は無料なので気軽に訪れることができます。

館内の案内と利用の流れ
中に入るとスタッフが来場者を迎えてくれ、初めての人には簡単な説明もしてくれます。
小さなバッグも含め、収蔵庫内には持ち込み禁止なのでロッカーに携帯以外の荷物を預けます。
ロッカー前にはカフェもあり、休憩しやすい環境です。
ただし、ミュージアムショップは併設されていないため、グッズ購入目的の方は注意が必要です。

「魅せる収蔵庫」というデザイン
Storehouseは「保管庫」でありながら「魅せる収蔵庫」としてデザインされています。
一階には入れませんが、ガラスの床や冊子の隙間から膨大なコレクションを覗くことができます。
アクセス可能なのは3フロアで、各階には作品リストが置かれており、また作品についたQRコードを読み取ることで詳細や棚ごとのテーマを確認できます。
本館に比べるとコンパクトで、1〜2時間あれば十分に見て回れるのも魅力です。
多彩なコレクションと展示テーマ
展示品は歴史的な彫刻から産業革命期の家具や工芸品、現代の日用品に至るまで多岐にわたり、棚ごとにテーマが設定されています。

「Order an Object」を利用すると、通常は公開されない作品を直接鑑賞することができます。
ウィリアム・モリス関連の作品も含まれているため、訪問日が決まっている場合は利用を検討するのもおすすめです(要予約、2週間以上前)。
椅子のデザインから見る暮らしの変化
館内には椅子のコレクションが豊富にあり、時代ごとに展示されています。
農家で使われ、アーツ・アンド・クラフツ運動で再評価されたカントリーチェアから、20世紀の名作ダイヤモンドチェアやフランク・ロイド・ライトが手掛けた椅子まで。
時代ごとの生活様式や技術革新に目を向けて鑑賞すると、より楽しめるでしょう。


モリス商会が手掛けた刺繍と木版
モリス関連の展示としては、ジョン・ヘンリー・ディアールがデザインし、モリス商会が製造した刺繍入りのパーテーションがありました。
草花をモチーフにした繊細な刺繍は、依頼主がモリス商会を選んだ理由を納得させる美しさです。

さらに、モリスの壁紙やデザイン印刷に用いられた木版も収蔵されています。
色ごとに異なる木版を用いるため、「いちご泥棒」の木版が3種類保存されており、当時実際に使われたものを間近に見ることができるのは貴重な体験でした。

日常から歴史へ──時代を超えて残るデザイン
他にも、フランク・ロイド・ライトがデザインしたオフィスのインテリアや、マグカップや靴といった身近な品々も展示されており、「今の日常」がいつか歴史として残されていくことを実感させられます。
まとめ:文化を守り、未来へつなぐ場所
V&A East Storehouseは、収蔵庫でありながら鑑賞体験を重視した新しいタイプの美術館でした。
舞台裏に触れられるような感覚や、時代を超えて受け継がれる工芸品に出会えるのは特別な経験です。
ロンドンを訪れる際は、本館だけでなくぜひV&A Eastにも足を運んでみてください。
未来の「文化の保存と公開」のあり方を体感できるはずです。
